ミステリーな日蓮 #018〈日蓮は国師を目指した〉

⑱〈日蓮は国師を目指した〉

 

 仏教界全体が祈祷を取り入れ密教化し、これを国家が庇護し受容し、活用した時代に、日蓮は密教批判を行いました。日蓮にとって国家の主体、王は、鎌倉幕府であり、執権でした。日蓮の目的は、国家の安穏です。そのために、執権が法華経を尊重しなければならない、と日蓮は考えました。蒙古の来襲に備えて密教での祈祷を命じ続ける幕府、執権が改心しなければ、日本は滅びると日蓮は主張します。そのために、とにかく法華経を否定した密教による祈祷の停止を日蓮は求めたのです。

 

 さらに日蓮は、執権による法華経信仰も求めます。しかもその法華経信仰は従来のものではありません。釈迦の仏法はすでに末法に入っており、国を導き、人々を救う力はなくなっています。この時代に国を導き、人々を救う力は、日蓮が興した新たな法華経の信仰以外にはない。日蓮は、そう考えています。では日蓮は、そのような政策の転換をどのように成し遂げようとしたのでしょうか。

 

 日蓮は、その理想を、智顗(天台大師)、最澄(伝教大師)の時代に求めています。智顗も最澄も、法華経を宣揚しようとした際、仏教界から激しい批判を浴びます。ここで登場するのが、王であり、天皇です。最高権力者は、智顗、最澄と諸宗との公開討論を主催します。そしてこの討論で勝利した智顗と最澄に、やがて仏教界の最高位である大師号を与え、天台宗を頂点とした新たな国家体制を敷くのです。また、智顗や最澄は、王と天皇から護国のための祈祷を命じられ、祈雨も見事に成就したと日蓮は述べます。

 

 日蓮は「立正安国論」で、もし念仏への帰依を停止しなければ、国乱に見舞われ、他国から攻められるだろう、と二つの予言を残しましたが、蒙古からの国書が届き、予言の一つが的中した際、日蓮は幕府に次の4点の処遇を期待しています。

 

 ①国からの褒章、②存命中の大師号の授与、③軍議への招聘、④敵国退治の祈祷の要請です。大師の称号は、智顗は存命中に受けていますが、最澄に贈られたのは死後のことでした。日蓮は、伝教大師を超える厚遇で自分を国師として迎えるべきだ、と主張しているのです。実は、これが日蓮の本音です。そして目標だったのです。続きは次回に。

 

—ご感想はお問い合わせメールまで(次回は7/1予定)—

 

江間浩人(2017.6.1)

 

 

《コラムのバックナンバー》

#017〈祈祷がなければ仏教じゃない〉

 #016〈天台僧の日蓮が、天台宗を撃つ〉

#015〈密教の祈祷をしてはならない〉

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