タイトル カントの思考の漸次的発展
サブタイトル その「仮象性」と「蓋然性」
刊行日 2020年11月2日
著者 船木祝
定価 2500円+税
ISBN 978-4-8460-1965-5
Cコード 0010
ページ数 160
判型 A5
製本 上製
内容
人は不確実性を前にして、何を尺度にしてどのように振る舞ったらいいのか。
本書は、この問いに長年にわたって、試行錯誤をしながら取り組んだ18世紀のドイツの哲学者カントの思考の足跡を辿る。
カントのその思考過程においては、ドイツ啓蒙の同時代人の思想との対話や対決があった。当初カントは、ヴォルフや、ヴォルフ主義者バウムガルテン及びマイヤーの蓋然性理論のように、不確実性の領域では数学的確実性を基準に探求を推し進めていけばいいと考えていた。ほぼ『純粋理性批判』出版の時期(初版1781年)において、カントは、道徳法則に基づくところの道徳的確実性の思想に基づいて、仮象性の領域において、全生涯の幸福を賭けることができるかという尺度に訴えるのである。
著者紹介
船木 祝 (ふなき しゅく)
1963年生まれ。学習院大学人文科学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得満期退学。1993年から2001年までドイツ連邦共和国トリーア大学でカント哲学及び18世紀概念史研究の世界的権威であるヒンスケ教授の指導を受ける。トリーア大学Ph. D.(哲学)。現在、札幌医科大学医療人育成センター准教授。哲学、倫理学専攻。
著書に『近代からの問いかけ――啓蒙と理性批判』(共著、晃洋書房、2004年)、『医学生のための生命倫理』(共著、丸善出版、2012年)、『教養としての生命倫理』(共著、丸善出版、2016年)、『響き合う哲学と医療』(単著、中西出版、2020年)他がある。
目次
引用について
略号一覧
序言 
a)研究の目標とテーマの限定  b)研究の方法と構成  c)verisimilitudoとprobabilitasのカントによる区別立てを巡る研究の状況
第一章  17・18世紀の百科事典及び著作におけるverisimileとprobabile の概念──概念史及び源泉史の問題
第1節 言語辞典におけるverisimileとprobabileの概念
a) ドイツ語辞典(グリムの『ドイツ語辞典』)
b) 外国語辞典
aa) キルシュの『羅独辞典』
bb) ゲオルゲスの『羅独・独羅辞典』
cc) デュ・カンジュの『中世ラテン語辞典』
dd) フリッシュの『独羅辞典』
第2節 事典におけるverisimile とprobabileの概念
a) ツェードラー編『学術大百科事典』
b) 哲学専門の事典
aa) ゲッケルの『哲学事典』
bb) ミクラエリウスの『哲学事典』
cc) ヴァルヒの『哲学事典』
dd) クルークの『哲学用語辞典』
ee) マウスナーの『哲学用語辞典』
第3節  クリスティアン・トマージウスにおけるverosimile(wahrscheinlich)とprobabile(probabel)の概念──前者の概念が有する二つの側面
第4節  クリスティアン・ヴォルフにおけるドイツ語「蓋然性(Wahrscheinlichkeit)」とラテン語「蓋然性(probabilitas)」の同一視
a) Wahrscheinlichkeitとprobabilitasの同一視
b) 蓋然的なものの領域への数学的方法の適用
c) 「根拠のある臆見」と「根拠のない臆見(妄想)」のヴォルクによる区別
第5節  バウムガルテンとマイヤーにおけるverisimileとprobabileの概念
a) アレクサンダー・ゴットリープ・バウムガルテン
aa) バウムガルテンにおけるverisimileとprobabileの概念
── 美学との関連におけるverisimileの概念の価値引き上げ
bb) バウムガルテンによる「真なる信じ込み(persuasio vera)」と
「偽なる信じ込み(persuasio falsa)」の区別
── ヴォルフの「信じ込み(Überredung)」概念からの離脱
b) ゲオルク・フリードリッヒ・マイヤー
aa) マイヤーにおけるドイツ語「蓋然的wahrscheinlich」
に対する二つのラテン語概念verisimileとprobabile
── ヴォルフとの対比において弱められたところの、
蓋然性概念と充足理由との関係性
bb) マイヤーにおける「臆見」と「信じ込み」の区別
──ヴォルフの「妄想」概念との決別
第6節  クリスティアン・アウグスト・クルージウスにおける
verisimileとprobabileの概念
a) verisimile(mutmaßlich)とprobabile(zuverlässig)の区別
──ヴォルフの蓋然性概念からの離反
b) 蓋然的なものの領域への物理学的・哲学的方法の適用
c) 蓋然性のための悟性の病との戦い──意志の改善の必要性
d) クルージウスの蓋然性理論における「道徳的確実性」の概念とその二義性
第二章  カントの思考の道程におけるverisimilitudoとprobabilitasの概念── ほぼ1770年代初頭における「仮象的(scheinbar)」
と「蓋然的(wahrscheinlich)」の概念
第7節 統計学的言語分析
第8節 「 仮象性(verisimilitudo, Scheinbarkeit)」と「蓋然性(Wahrscheinlichkeit)」との区別の最初の登場──『レフレクシオーン』2591番
第9節  懸賞論文(1762/1764年)における数学と形而上学との方法論的区別
第10節  ほぼ1770年代初頭における「仮象的(scheinbar)」と
「蓋然的(wahrscheinlich)」の概念
a) 『ブロンベルク論理学』における「仮象的(scheinbar)」と
「蓋然的(wahrscheinlich)」の概念
b) 『フィリッピー論理学』における「仮象的(scheinbar)」と
「蓋然的(wahrscheinlich)」の概念
第11節  1770年代初頭における「臆見」と「信じ込み」の概念──マイヤーとの対決
第12節  ほぼ1770年代初頭における「道徳的確実性」の概念の不明確さ 0
第三章  カントの思考の道程におけるverisimilitudoとprobabilitasの区別── ほぼ『純粋理性批判』出版の時期における「仮象的(verisimile; scheinbar)」と「蓋然的(probabile; wahrscheinlich)」の概念
第13節  ほぼ『純粋理性批判』出版の時期における「仮象的(verisimile; scheinbar)と「蓋然的(probabile; wahrscheinlich)」の概念
a) 『レフレクシオーン』2595番における「仮象性(verisimilitudo)」と
「蓋然性(probabilitas)」の概念、及び『レフレクシオーン』2698番
における「仮象性(verisimilitas)」の概念
b) 『レフレクシオーン』2209番における「仮象性(verisimilitudo)」と
「蓋然性(probabilitas)」の概念── マイヤーの「部分的真理(partiale Wahrheit)」の概念に対するカントの注意書き
c) 『ペーリッツ論理学』における「仮象的(verisimile; scheinbar)」と
「蓋然的(probabile; wahrscheinlich)」の概念
d) 『ウィーン論理学』における「仮象的(verisimile; scheinbar)」と
「蓋然的(probabile; wahrscheinlich)」の概念
第14節  ほぼ1780年代初頭における「臆見」と「信じ込み」の概念
第15節 『 純粋理性批判』出版の時期における実践的に十分な「確信」と、単なる「信じ込み」との明確な対置──最終吟味としての賭け
第16節  1780 年代及び1790年代における「仮象的(verisimile; scheinbar)」と「蓋然的(probabil; wahrscheinlich)」の概念
a) 『レフレクシオーン』2480番における「仮象的(verisimile)」の概念、
及び『レフレクシオーン』2604番における「仮象性(verisimilitudo)」
と「蓋然性(probabilitas)」の概念
b) 『ドーナ・ヴントラッケン論理学』における「仮象的(verisimile)」
と「蓋然的(probabile)」の両概念
結語
あとがき
アカデミー版カント全集第XVI巻、及び第XXIV巻における、見出し語別引用箇所索引
アカデミー版カント全集第XVI巻、及び第XXIV巻における、見出し語別原文一部抜粋索引
文献一覧  人名索引  事項索引
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