- 2022-11-1
- お知らせ
弊社の創業50周年(2021年)を記念して公募した「論創ミステリ大賞」では、2022年9月末日の原稿締め切りまでに、応募総数68編の作品をお送りいただきました。長編作にも関わらず、事務局の予想を上回るご応募、大変にありがとうございました。
論創社内で10作品の第1次予選通過が決定、続いて選考委員会(選考委員長:ミステリ評論家・横井司氏)で上記の通り1作品の大賞と5作品の最終候補作が選ばれました。
今後、作品の詳細は順を追って発表させていただきますが、受賞された方はもちろんのこと、応募された皆様にこの場をお借りして深く御礼申し上げる次第です。
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受賞の言葉 三咲光郎(みさき・みつお)
この度は、論創ミステリ大賞に選んでいただきまして、ありがとうございます。創業五十周年に私の作品が関わらせていただいて、光栄であると同時に、受賞作としての大役をうまく務めることができるかとドキドキしてもおります。
私は、小学校の高学年から小説めいたものを書きはじめて、気がつけば、もう五十年余り、書きつづけています。五十年歩んでこられた論創社さんと、令和の今に、こんなふうにお互いの道が交差するのは、人生の楽しい僥倖で、書いてきてよかったと思える瞬間です。
受賞作『刻まれし者の名は』も、さまざまな人生が交差する物語です。
一九四五年、終戦直後。ダグラス・マッカーサーが厚木飛行場に降り立った日、新宿の焼け跡で身元不明の白人男性の死体が見つかります。三人の刑事たちが秘密裡に捜査を始めると、戦災の中のさまざまな人生が浮かび上がってきて……。
この小説を書いていたのは、ロシアがウクライナに軍事侵攻を始める前でした。
私は、大正や昭和の時代を舞台にした小説を書くことが多く、それらの作品を、自分で勝手に、近代小説、レトロ小説、ネオ時代小説などと呼んでいます。なんだ、昔の話か、と思われるかもしれませんが、スペイン風邪がパンデミックをひき起こし、ヨーロッパの政情不安から世界大戦が広がった、あの混乱と戦争の時代が、遠い昔の話だったとは感じられないのが今の時代です。作中で、三人の刑事たちが見た結末は、現代人の私たちの心情に重なるところがあると感じています。
この作品に目を留め、選んでくださった関係者の方々、作品が生まれるのを助け、見守ってくださった方々、これから本を手にとってくださる読者の方々に、深く感謝いたします。